急性中耳炎とは

急性中耳炎の原因
鼻から入る細菌やウィルスが原因で中耳の粘膜が急激に炎症を起こすことによって発症します。鼻や喉の調子が良くないときに鼻を強くかむと細菌が中耳に入り込み、発症しやすくなる特徴があります。とくに乳幼児のお子さんは、色のついた鼻汁(膿性鼻汁)が出てかつ発熱がある場合は、急性中耳炎の可能性が大きいとされています。
急性中耳炎の症状
耳の激しい痛み、ズキズキする痛み、発熱、鼓膜が破れて膿が外に流れる、耳が詰まった感じなどの症状が現れます。小さいお子さんは、痛みを上手に訴えることができないため、ぐずつきなど機嫌が悪くなる、しきりに耳に手をやるなどのサインを示すので、注意して観察してください。
急性中耳炎の治療方法
軽症の場合は、抗生物質や消炎剤で殺菌、吸引除去を行っています。乳幼児に処方される抗生物質に対して抵抗力のある薬剤耐性菌が原因で罹患する患者さんが増えています。
重症化してしまうと、乳突洞炎を発症してしまい、点滴治療や手術治療が必要になります。
鼓膜切開術
鼓膜が酷く腫れて膿が溜まり、非常に強い痛みが伴ったとき、または高熱が出た時は、鼓膜を切開し、溜まっている膿を排出する手術を行います。麻酔液を含ませた綿花で鼓膜に麻酔をして切開します。中耳腔内の細菌量が減少するので抗生剤も効きやすくなります。切開した鼓膜は、膿が減少すると数日で自然に閉じます。
滲出性中耳炎とは
耳管機能が低下することで、粘膜からしみ出た浸出液が中耳に溜まる症状を滲出性中耳炎と言い、お子さんの難聴の原因として一番多いとされています。とくに3歳から6歳のお子さんに多く見られるのが特徴で、滲出液が溜まると鼓膜の動きを悪くして難聴を引き起こします。症状が長期化すると言語発達に影響を及ぼすため、注意が必要です。
滲出性中耳炎の原因
急性中耳炎がなかなか完治せずに、鼓膜内に膿が溜まって発症するのが最も多く、そのほかは、副鼻腔炎や咽頭に炎症があると発症しやすいとされています。
滲出性中耳炎の原因は以下です。
- 急性副鼻腔炎
- 慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
- 急性咽喉頭炎
- アレルギー性鼻炎
- アデノイド肥大
以上の疾患は、耳管機能を低下させ、滲出性中耳炎に発展する可能性が高いと考えられています。滲出性中耳炎の治療は、中耳炎の治療のほか、副鼻腔や咽頭の疾患治療も同時に行います。
滲出性中耳炎の症状
痛みがほとんどなく、ゆっくりと病状が進行するため、小さいお子さんは周囲が気づかないうちに症状が進んでいる場合が多いとされています。難聴の症状が目立ち、そのほか耳詰まり感もあります。お子さんの様子が以下のような状態の場合は、滲出性中耳炎にかかっている可能性があるので、注意して見守ってください。
- しゃべる声が大きくなった
- テレビのボリュームを上げる
- 耳の周りに手を持っていく
- 耳が塞がった感じがする
- 名前を呼んでも反応しない・振り向かないなど
- 風邪や鼻炎が長引いている
滲出性中耳炎の完治には、長期間を要します。症状をそのまま放置しておくと、症状が悪化し、中耳空の壁に鼓膜が付く「癒着性中耳炎」や周囲の骨を壊してしまう「真珠腫性中耳炎」などの重篤な疾患に発展してしまいます。気になる症状がある場合は、早めに受診してください。
滲出性中耳炎の治療
難聴の症状が軽度の場合は、原因となる疾患を治療していきます。経過観察しながら自然治癒を図ります。また、難聴の症状が長期にわたって続く場合は、中耳に溜まった浸出液を排出する手術を行います。以上の「聞こえ」を良くするための治療と同時に、鼻や喉の病気に対する治療を平行して行っていきます。
鼓膜切開術
鼓膜を麻酔して、切開していきます。中に溜まっている浸出液を取り除き、中耳空内を換気します。浸出液が無くなることで聞こえるようになります。切開孔は3日ほどで自然閉鎖します。手術中の痛みはほとんどないので安心して手術を受けられます。
鼓膜換気チューブ留置術
鼓膜切開術を行っても繰り返し滲出性中耳炎を起こす場合に有効です。鼓膜に小さなシリコンやテフロンチューブを挿入し、中鼻腔の換気を長期間行います。これによって、重症の場合でも約8割が治ります。大人や暴れないお子さんならば局所麻酔を、暴れてしまうお子さんは他院を紹介して全身麻酔を行います。局所麻酔はその場で可能です。通常、お子さんの場合1.5年ほどでチューブ抜去が可能です。
手術費用
滲出性中耳炎の治療には健康保険が適用されます。
鼓膜切開術(片側・3割負担) | 約10,000円 |
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鼓膜チューブ留置術(片側・3割負担・チューブ代別) | 約50,000円~約70,000円 |